いや、俺に聞くなよw 知らねえってw
だよなw あいつ、オナ禁のしすぎでおかしくなっちまったんじゃねぇの?
じゃあなー!
最期の会話がこれだ。全く最低だ。
親友をこんな形で失うなんて…
刑事「っと…じゃあ…友人を亡くしたばかりで酷だとは思うが、取り調べに協力してもらえるか…」
はい。あいつを捕まえてくれるなら…何だって。
刑事「じゃあまず、恐らく彼を殺害したのは君の同級生のキム・チダタ君だ。何か心当たりは?」
……あいつと別れる直前、キムの事を小馬鹿にしてました。
刑事「ちなみにどんな内容だった?」
それは…いや…オ…オナ…き、
刑事「まさか…オナ禁令の事を?」
え?なんで知ってるんですか…?
刑事「キム君はオナ禁令の事を知っていたのか?」
えぇ。オナ禁令は絶対に遵守すべき〜とか、やけに変な事を口走っていました。
刑事「実は、その事なんだが…オナ禁令っていうのは隠語なんだ。オーラ・ダイナモ禁止措置令ってね。」
オーラ・ダイナモが禁止?何故です!!何故そんな事が!
刑事「あれはもう30年くらい前になる。当時にしてみれば地味な話題だったから、殆ど話題にされなかったんだ。とある地方議員が、選挙のインタビューでオナ禁令の事を答えていた。あの時代はまだ今ほどEsportsが意識されていなかったから、場に流されて結局選挙も落ちた。今見れば、先見の明があったと言わざるを得ないね。」
そんな前にオーラとダイナモを敵視していた人がいたんですか…?
刑事「ああ。恐ろしい事にね。君は今の日本のEsports法三条を知っているね?」
はい、確か『敵にダメージを与えた際には数値を二チャっとしながら味方に報告しなければならない』・『Twitterのプロフィールは全て英語で書かれていて、尚且つリスペクトしているプロも明記しておく必要がある』・『モンスター、またはレッドブルを一日に必ず三本飲まなければならない』…でしたよね?
刑事「そうだ。今やゲームの競技シーンは過熱の一途。そこに水を刺す不純な輩は完全に粛清されなければならない。」
でも、オナ禁令とキムに何の関係があるんです?
刑事「実は彼の父親が、先程言った地方議員だったんだ。名前はキム・チ。一応日本国籍だったが、彼は韓国で生まれ育っていた。青年時代にフォートナイトちゃんねるというエンジョイを謳った掲示板に書き込んでいた事が確認されているんだ。エンジョイは重罪。君もよく分かっているね。」
えぇ…でも…キムがそんな過激思想だったなんて…
刑事「キム・チは既に死刑が執行されている。彼は父を死に至らしめたEsports法を強く憎んでいるだろうね。だからオナ禁法を馬鹿にした君の友人を、殺害した。」
…!
刑事「元々韓国はEsportsにおいて日本に敗れている。キム君の父親は余程熱心な愛国者だったんだろうね。」
そんな…だからってこんなの!
刑事「あまり大きな声では言えないが、警察は今キム君の家宅捜査を強行しているんだ。彼の部屋からエンジョイの痕跡が僅かでも検出されるようなら、少年法と法廷を無視し即刻死刑が確定する。それで君の友人が浮かばれるかは分からないが…」
…
はい…分かりました…
あれから1ヶ月。暮らしは大分以前に近づいた。カジュアルプレイヤーの死刑執行後には、死体に向けてアサルトライフルを連射しながら屈伸するのが現代日本における弔いだ。
僕はキムにこの弔いをした。吐きそうになりながら…。
今日も僕はモンスターを飲みながらアイテムショップを見る。
…へぇ、GGスプレーか。そういえばまだ持ってなかったな。
僕はおもむろにギフトメニューから親友のIDを選ぶ。
送信完了…。そうだ。これが僕から君に対する最大の弔いだ。