ま 苦しみのブログ

あんまり表には出さないよ!!

田舎のくたびれたオタクを喰って成長する化け物

数年前、家族で東京旅行に行った。

とても楽しかったのを覚えている。

特に良かったのは、秋葉原

目に映る景色全てが、僕というオタクを肯定してくれていたような気がした。

楽しかった。楽しかったんだ。

とても。

 

その頃は、まだ家にネット回線が敷かれておらず(我ながらとんでもないアナログ家庭である)スマートフォンも持っていなかった。

ネットが無いのにどうしてこんなオタクが出来上がったのか、と言えば、ここから更に数年前のこと。

両親が出張で、僕だけが1人家で留守番をしていた夜、誰にも文句をつけられないから一日中ゲームをしていた。

いよいよ寝なければまずい、という時間になったが、なんだか興奮してしまって中々寝付けなかった。あれが俗に言う、深夜テンション、というやつなのだろう。

喉が渇いて、リビングに降りた。

寝室に戻っても眠れないことは目に見えていたから、なんとなくテレビを付けてみた。

ここが始まりだった。

たまたま放送していた深夜アニメに釘付けになり、結局朝まで眠ることはできなかった。

翌日の学校をほとんど居眠りに費やすハメになったことを覚えている。

あれから、徐々にオタクとしての道を歩み始めたと思う。

なかなか深夜アニメを連続して見ることは難しく、かといって録画でもしようものなら家族に見つかってしまう。

それでも、深夜遅くまで起きてアニメを見るという体験は、ど田舎に住む僕にとっての数少ない娯楽の一つになっていった。

 

車で1時間ほどかかる地方都市に、家族で買い物に出かけたことがあった。

そこでふと目に入ったのは、某アニメグッズ専門店。

今までそんな店があるとすら知らなかった僕は、あまりにも中が気になり、トイレに行くと嘘をついて一瞬だけ店内を見回すことにした。

…楽園だった。

その時たまたま財布に入っていたなけなしの小遣いで買ったお気に入りキャラのストラップは、今でも持っている。

 

高校生になり、学校の近くでバイトを始めた僕は、金銭的にある程度の余裕ができた。

スマホを持つ許可が降り、X(旧Twitter)を始め、ますますディープなオタクへの道を歩み始めた。

高校は家から遠かったため、原付バイクでの登下校が中心となり、それに伴って地方都市のアニメ専門店に行く機会も増えていった。

 

高二の夏、東京観光で秋葉原を知った。

そこら中に張り出された広告が、輝いて見えた。

 

無事、大学に合格した。

勉強ずくめで押し込まれていたコンテンツへの欲求が爆発した。

人生の夏休みとはよく言ったもので、時間が無限にあるようだったキャンパスライフ。

契約したサブスクで、オタクライフに明け暮れた。

仲の良かった数少ないオタク友達は上京し、電車一本で秋葉原に行ける地域に住んでいるらしい。

羨んだこともあるが、やがて忘れていった。

こうも長く田舎に居続けると、外に出たくなくなってしまうのだ。

大学と実家の往復。

あれだけ好きだったアニメグッズ屋も、物珍しさがなくなった。

自分のコンテンツ消費力に限界を感じてもいた。

なんだか、すごく疲れた気がする。

 

……近所に、やけに大きな、変な形の建物が建設され始めた。

ラブホテル?

田舎にはよく、城のような外見の禍々しいラブホテルが建っている。

 

建設開始から数ヶ月が経ち、オープンの看板が大量に設置された。

この建物は、パチンコ屋だったのだ。

考えもしなかったが、自分の年齢になるともうパチンコ屋にも入ることが出来るのだ。

店先を見ると、懐かしいものが視界に飛び込んできた。

中学時代没頭していたアニメの、台…?

 

気がつくと、その台に座っていた。

 

新しいコンテンツに疲れると、昔好きだったものを繰り返し、繰り返し見たくなることがある。

あの頃に戻れる気がして。

いつの日か、あの頃の記憶すら金銭に塗りつぶされるとも知らず。