銀ダコ ハイカラスクエア支店

長く長く続き多数の犠牲者を出した第二次大ナワバリバトルは、またもやイカ陣営の勝利に終わった。

超強化されたヒーローシューターの情報がイカ陣営に広まり、ブキ性能でタコに圧倒的な差を付けて圧殺したのだ。

そしてそのヒーロー武器に使われている技術を応用しようとする動きにより、度重なる技術革新が起こった。

遂に上昇した海面に潜水できる潜水艦が完成し、以前この星の王者だった人間達の世界の片鱗をその目で見る事になる。

 

かつて人間が作った建物は水に侵されてはいたが、その材質や見た目等はしっかりと清掃をすれば今の世界でも十分使用可能な代物だった。

これにより資源の大量確保が約束されたもの同然になったイカ達は、遺物の店の看板やメニューを元に人類が食べていた料理を復元して提供する飲食店を開業した。

 

…タコ焼き。それはタコに勝利したイカ陣営にとって、最も力を誇示できる食べ物である事は明らかだった。

敗戦したタコ兵は奴隷としてバトルの後処理等の労働機関で働かせられ続けていたが、過労により不調を起こしたタコから足を切断され、人間が経営していた『銀だこ』の看板が建った店へ運ばれる。

奴隷の足を使うというだけありかなり高価な料理であった事は言うまでもないが、タコに対する差別意識が高かった大ナワバリバトル直後の銀ダコは瞬く間にハイカラスクエア1の繁盛店になった。

 

少し時が経ち、タコの足がスーパーやコンビニでも見かけられるようになった頃である。

貪り続けたイカに天罰が下ったとでも言うべきだろう。

奴隷のタコの足の需要が供給を追い越し、生えて来るより前に市場のタコの足が尽きてしまうようになったのだ。

既にイカ達はタコの足に対して薬物依存のような症状を発症しており、その供給が停止された街では暴動が起こった。

まだ辛うじてタコの足が保存されていた銀ダコは、その残された足を奪おうとするイカ達から店を守る為に防衛を開始する。

 

事態を重く見たイカ陣営の政府は、暴動が起き始めてから少し後にタコ足の違法化を進める事を発表した。

当然簡単に諦め切れる訳もないイカ達は、かつての人類における薬物類のように“闇”の取引を行う事によりタコ足は裏社会で莫大な利用価値を生み出していった。

 

そして違法化に合わせて銀ダコは閉業し、従業員達は保存されていた大量のタコ足を裏社会に売却し莫大な利益を抱え込んだのだ。

その情報がどこかからか外部に漏れ、本銀ダコ従業員の多数は足に飢えたイカ達の恨みを買ってしまう。

 

そうした内紛等のゴタゴタの中、違法化され足の搾取が止まったタコ陣営が動き出そうとしていた。

過去に我々を嘲笑い、貪り続けたイカ達に反撃を開始する、と決起したタコ陣営。

かつての総帥だったタコワサ将軍を中心に計画は順調に進んでいった。

そして遂に、イカ達の鬱憤が最高潮まで達した頃に事の発端と化したハイカラスクエアで計画は始動された。

タコ達が開発した新兵器『ミズデッポー』により、初めての犠牲者が出た。

イカ・タコ達にとっての超危険劇物の『水』をインクの要領で標的に発射するという極めて単純明快なものだったが、イカ陣営のヒーローシューターに比べてミズデッポーは威力が段違いに高い。

ヒーローシューターは3発は相手に命中させなければ撃破できないのに対し、このミズデッポーはイカの体に僅かでもかすれば撃破とはいかなくとも致命傷は免れないであろう。

そして回復をしようとインクに潜ったイカは、何も分からずその水が混じったインクに全身を浸すのだ。

 

こうしてタコ足を巡った内紛の末に、タコ陣営は隙をついてイカに対して初めて勝利した。

 

少し後、タコ陣営では『イカの刺身』が大流行する事になるのだが、それはまた別の話である。